養豚というのは、とかくイメージが悪い。「きつい、汚い、格好悪い」。いわゆる「3K」の職場と思われている。しかし、現在、養豚業は機械化も進み、以前とは様変わり。今後さらに改善・発展していくことが予想されます。私たち早坂沢畜産センターの考えに触れていただき、そして、養豚が誇れる仕事であることを実感してください。早坂沢畜産センター
代表取締役 樋口清人
アメリカの屠場での出来事です。そこで働く人の多くが新型コロナウイルスに感染し、屠場の約40%が閉鎖するという事態が起きました。早い段階で再開したために大きな影響はありませんでしたが、もし閉鎖期間が長引くようであれば、生産量は大幅にダウンし、日本に輸入豚肉が入ってこないという可能性もあったのです。これは一つの例ですが、今後もこのような事態が起きないとは限りません。日本国内で豚肉の生産を行うことはとても重要なことですし、もしもの時のセーフティネットの役割も果たすことができます。
さらには家庭において、豚肉はよく食べられていますし、良質なタンパク資源として重宝されています。私たちは根本的な食を支えているという自負があります。そして、養豚は今後も有望な産業として成長していくと考えています。
規模が小さいとコストが余計にかかる。たとえば、出荷のトラックは、大型だと一台で60頭まで積めるのですが、2階建てを使用すれば1回に120頭が積めるようになります。規模が大きくなることで、運賃にかかるコストは下げることができます。さらには飼料にかかるコストも下げることができます。
もちろん会社の規模を大きくしていく途上で、従業員の数も増やしていきたい。人数が増えることで従業員が休みやすい環境を作ることができます。ただ単純に大きくするだけではなく、人員の配置などに気を配りながら成長していければと思っています。
アメリカの農場で聞いて印象に残っている話があります。「農場の規模はどのような基準で決めているのか」と尋ねてみました。彼らは「一人当たり母豚300頭くらいを管理することができる。そして農場にいるマネージャーが管理できる人数はだいたい20人くらいなので、そこから算出して6000頭という規模を決めています」と言ったのです。
私が感じたアメリカの優れている点は、合理的で、作業をシステム化するところ。職人気質に頼るのではなく、極端な話、誰が作業をしても合格点に達するようにしています。ある程度は日本の事情に合わせてアレンジしていく必要があると思いますが、アメリカの学ぶべきところは見習って、この一関で理想とする養豚業を実践していきたいと考えています。「広さ」ではなく、管理できる「人」の数で規模を決めているところなどは、日本の養豚経営でも生かせる考え方だと思います。
岩手が良いと思うのは気候条件。すごく暑くならないというのは養豚にとって重要です。
あとは養豚が密集していない。ここからだと半径10キロ以内に他の養豚場がありません。たとえば他の養豚密集地帯だと、フェンスの向こうに4つくらい養豚場が連なっていたりするんです。そういうところだと病気がすぐ広まってしまう可能性もあり、コントロールが難しい。そういうところがないというのはかなりのメリットだと思います。
また港や屠畜場が近いという地理的なメリットもあります。港は釜石であれば約1時間30分、屠畜場は宮城県の米山で約1時間。これらによって運送コストを抑えることができています。養豚に適した土地柄と言える岩手は、今後さらに養豚が盛んになっていく可能性が非常に高いと感じています。
今の社会は効率化が進んでいます。その反面、個々の専門性が高まり、仕事が細分化されることで、自分のやっている仕事の結果が見えにくかったり、分かりにくくなっていると感じています。その点で見れば、養豚は自分の仕事がしっかり「見える」。
自分がやったことが成果としてきちんと現われる。そしてその仕事をちゃんと会社が評価し、正当な賃金として還元される。結果、それは自分の幸せにもつながっていく。早坂沢畜産センターはそれを実現できる会社にしていきたいと考えています。
私自身、東京都出身でこの一関は縁のない場所でした。事業継承するに当たっていろいろな養豚場を見学したのですが、この会社には事業としての大きな可能性を感じて入社しました。
農業の価値が見直されてきている今、ぜひ多くの人に早坂沢畜産センターにも目を向けていただき、そして、私たちの新しい仲間に加わってほしいと思っています。
1982年1月12日 東京都生まれ。
麻布大学 獣医学部 獣医学科卒。
犬猫小動物病院(獣医)、イワタニ・ケンボロー(株)に勤務した後、早坂沢畜産センター代表取締役社長に就任。